私達日本人は、災害時を除く日常生活の中で、水に困ったことはないのではないでしょうか。
- 水が不衛生だと感じる
- 水が不足していると感じる
このようなことを感じたことがある方は少ないと思います。
その理由は、日本が水に恵まれているから・・・ではなく、仮想水のおかげなのです。この「仮想水」という言葉を聞いたことがある方は少ないかもしれません。
ここでは、「仮想水」について、詳しく説明していきたいと思います。
「仮想水」とは
仮想水は、バーチャルウォーターとも呼ばれているもので、食糧を輸入している国がもしその食糧を自国で生産するとしたら、どのくらいの水が必要になるのかを推定したものです。
ロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授である、アンソニー・アラン氏によって打ち出された理論です。
牛肉を生産するには・・・
仮想水を分かりやすくするために、牛肉で例えてみたいと思います。
牛肉を生産しようとした場合、まず牛が食べる食糧が必要になります。その食糧を生産するための灌漑用水(農場に人工的に水を供給する水)が必要になり、肥料を育てるために水が必要になり、お肉の洗浄やその他加工にも水が必要になります。さらには、牛は食糧として大量に穀物を消費します。
牛肉を生産しようとしただけでも、こんなにも多くの水資源を使用する必要があるということになってしまいます。
ですが、牛肉そのものを輸入してしまえば、その牛肉生産のために必要になる水を使わなくて済みます。
言い換えれば、これは食糧の輸入でありながら、その食料を生産するために使った水を輸入しているということにもなるのです。これが、仮想水の考え方です。
日本の水が枯渇しない理由
国土交通省によれば、日本が年間で使用している水の量は約831億m3にもなります。
年間と通してこんなに水を使用しているのに、どうして日本では水不足にならないのか、気になるという方も多いのではないでしょうか。
実は日本では、仮想水としてこれと同等の水を輸入、海外に依存しているというデータがあります。
*参考:JICA
2005年の時点では、日本の仮想水輸入量は800億を超える量となっており、世界でも最大と言える仮想水輸入国です。
その輸入品を国内で生産していたとしたら、一体どのくらいの水が必要になっていたのでしょうか。
飲料水や生活に必要な水がなくならないのは、諸外国から水資源を仮想水として輸入しているからなのですね。
これからはそうはいかない
日本は水を仮想水として輸入しているし、将来的にもこのまま水が豊富な状態を保てる国だから大丈夫!と思っている方も多いかもしれませんが、実はそれは大きな間違いです。
世界では今、水不足が深刻化しており、日本もその影響を受けています。その証拠に、人口一人あたりが利用できる水資源の量を示す尺度である「水ストレス」が諸外国と比較すると、日本は高めの国だと認識されています。
これはつまり、水の需要に対して供給が追いついていないということを示しており、水不足は日本も他人事ではないのです。
世界各国で人口増加に伴い水の消費量が増えているため、今後も仮想水が安定して供給されるわけではないと言えます。水不足は他の国の問題だからと、知らん顔をしていることはできなくなってきているのです。
おわりに
水不足に直面したことがない今の日本では、このような問題をあまり真摯に受け止めることができない風潮にあります。
「他国の話」「日本人には関係ない」というように、目を背けてしまっていては、将来日本も水不足に陥り、紛争の中心になってしまうかもしれません。何をすれば水不足解消に少しでも貢献できるのか、考えることも大切です。